小さなヒントたち
小さなお店が「デザインの正解」に迷った時に。センスに頼らない選び方の基本

かっこいいロゴを作れば変わると思ったけど、売り上げは変わらなかった。何が違ったんだろう……

流行りの色や形を取り入れてみたけど、うちの店らしくない気がして落ち着かない……

既製品のパッケージを使っているけど、他のお店と似たり寄ったりで埋もれている気がする……
お店や会社を経営していると、そんな「デザインへの違和感」がよぎることがありますよね。
誠実に、真面目にお仕事に向き合っているからこそ、「自分にセンスがないからいけないのかも」と、答えのない迷路に入り込んでしまうこともあるかもしれません。
でも、安心してください。
あなたがデザインで迷ってしまうのは、センスがないからではなく、ただ「選ぶための順番」を知らなかっただけです。

今回は、小さなお店がセンスに頼らず、着実に成果へつなげるためのデザインの選び方の基本についてお話しします。
デザインの決まった既製品を使用している場合でも、再現性のある方法をお伝えしますね!
目次
とじるデザインには「正解」がない?――市場が答えを教えてくれる
「デザインの正解を教えてほしい」
切実な思いでそう探されているかもしれません。
しかし、実はデザインを作る段階で「これが100点満点の正解です」と言い切れるものはありません。
100点満点のデザインは、出すまで誰にもわからない
デザインの本当の正解は、マーケット(市場)に出してみて初めて分かります。
「当初の目的を達成できたか?」
「お客様の反応はどうだったか?」
その結果こそが、そのデザインが正解だったかどうかを教えてくれる唯一の答えです。
デザイナーも経営者も、出す前にあるのは「仮説」だけ。
だからこそ、「やってみて、直す」というしなやかな姿勢が、小さなお店には何より大切です。
「なんとなく」から卒業し、「根拠」をもってデザインを選ぶ勇気
「なんとなく目立ちそうだから」
「流行っている色だから」
こうした感覚だけでデザインを決めてしまうと、後で振り返った時に「なぜダメだったのか」が分からなくなります。
たとえば、2020年頃からZ世代と呼ばれる若者を中心に流行している『平成レトロブーム』をご存知でしょうか。
「ビビッドカラー・ネオン・キラキラ・スケルトン」などを想起させるデザインです。

「流行っているから平成レトロなデザインにしよう」という「なんとなく」の理由でデザインを選んでしまうと、どうなるでしょうか。
- お店の雰囲気に合わない
- 商品の価値が伝わらない
- お客様に選ばれない
という結果になってしまいます。
これは、極端な例えですが、実際に現場を思い返してみれば、
- 担当者の好みで選んでいる
- なんとなくお客様が好きそうという勘で選んでいる
- いつも通りが安心だから同じようなものを選んでいる
ということが起きているのではないでしょうか。
この状態では、「どこをどう直せば伝わるデザインになるのか」が分からず、迷いから抜け出すことができません。
正解がないからこそ、「なぜこのデザインにしたのか」という根拠を持つことが、次の一歩を決める手助けになってくれるのです。
失敗しないための「デザインの順番」――「基本の定義」がすべて
では、どうすれば「なんとなく」ではなく「根拠」を持ってデザインを選べるようになるのでしょうか。
それは、制作に取り掛かる前の「デザインの順番」を正しく知ることで解決できます。
デザインには、成果に繋げるための「外せない流れ」が存在します。
多くの経営者が、いきなり色や形といった「目に見える部分」から考えてしまいがちですが、実はその前にある「基本の定義」こそが、デザインの命運を分けるのです。
ここでは、土台となる4つの項目を詳しく紐解いていきましょう。
1. Why:何のために?(目的の整理)
まずは、そのデザインによって「何を変えたいのか」という目的地をはっきりさせます。
単に「売上を上げたい」だけでは、まだ少し言葉が足りません。
- 「お店の存在を知らない人に、まずは名前を覚えてほしい」のか
- 「安売りをしなくても価値が伝わり、選んでもらえるようになりたい」のか
- 「今の常連さんに、もっと深くファンになってもらいたい」のか
目的地が「東京」なのか「沖縄」なのかで、選ぶ乗り物(デザイン)が変わるように、「今回のゴールはどこか」を最初に決めることで、迷った時の確かな道しるべになります。

2. Who:誰に?(届けたい相手)
次に、そのデザインを「誰に渡すのか」を考えます。
「30代女性」といった広い括りではなく、もっと具体的に、あなたの目の前にいる一人のお客様を思い浮かべてみてください。
- どんなことに悩んでいますか?
- どんな瞬間に幸せを感じる人ですか?
- どんなことを大切にして(価値観)過ごしている人ですか?
デザインは、いわば「大切なお客様への手紙」です。
気心の知れた友人に送る手紙と、尊敬する恩師に送る手紙では、選ぶ便箋も言葉遣いも変わりますよね。
相手を具体的に想像するほど、届くデザインの精度は上がっていきます。

3. What:何を伝える?(独自の価値)
届けたい相手が決まったら、次はその人に「何を約束するか」を絞り込みます。
あれもこれもと詰め込みたくなりますが、欲張りすぎると結局何も伝わらなくなってしまいます。
- 「どこよりも丁寧に話を聞いてくれる安心感」なのか
- 「他では味わえない、日常を忘れるような特別感」なのか
- 「忙しい毎日をちょっと楽にする、圧倒的な便利さ」なのか
「あなたのお店だからこそ、その人に届けられる一言」。
それをひとつだけ、芯に据えてください。
その「ひと言」が、お客様があなたを選ぶ理由になります。

4. Tone:どんな印象で?(空気感の統一)
最後は、それを「どんな雰囲気で」届けるかという空気感です。
「かっこいい」「おしゃれ」という言葉は人によって解釈がバラバラですが、ここを言語化しておくことでデザインのブレを防げます。
例えば「誠実な雰囲気」と言っても、
- 老舗のような「重厚で伝統的な誠実さ」
- 現代的な「シンプルで清潔感のある誠実さ」
- お隣さんのような「温かくて親しみやすい誠実さ」
など、表現は様々です。
「自分たちのブランドがどんなお洋服を着て、お客様の前に立つのがふさわしいか」。
この世界観(トーン)を定義しておくことで、色やフォントを直感ではなく、論理的に選べるようになります。

具体的なパーツ(色・フォント)は、定義のあとについてくる
これら4つの「基本の定義」が固まって初めて、具体的な要素を決めに入ります。
- 情報の優先順位(一番に伝えたい「What」は何?)
- カラーリング(「Tone」を表現する色はどれ?)
- フォントの種類(「Who」に届きやすい文字の形は?)
- 画像や図形(「Why」を叶えるためのビジュアルは?)
これらはすべて、先ほどの「基本の定義」を叶えるための「道具」です。
道具から先に選ぶのではなく、「何をしたいか(目的)」を決めてから「どの道具(デザイン要素)を使うか」を選ぶ。
この順番を徹底するだけで、デザインは「単なる飾り」から、あなたの「強力な味方」へと飛躍的に変わります。
プロに頼むときも、自分で選ぶときも。経営者が持つべき「視点」
ここまでお伝えしてきた「デザインの順番」は、単なる制作のテクニックではありません。
実は、この順番を知っておくことこそが、「経営の舵(かじ)」をしっかりと握ることに直結しています。
デザインを形にするには、大切なお金と時間を投資します。
その投資を「単なる出費」で終わらせるのか、未来のお客様を連れてくる「資産」にするのか。
形にするのはプロの仕事ですが、その方向性を決めるのは、経営者であるあなたにしかできない役割です。
この役割を理解すると、「せっかく作ってもらったのに、なぜか成果につながらなかった……」という、あの出口のないような徒労感を感じることはなくなります。
デザイナーを「魔法使い」にしないために
プロのデザイナーに依頼する際、一番避けたいのは「丸投げ」にしてしまうことです。
それは、目的地を言わずにタクシーに乗り、運転手さんがたどり着いた場所に対して「ここは行きたかった場所じゃない」と不満を言ってしまうようなもの。
デザイナーは表現のプロですが、あなたの事業の想いや、お客様の顔を一番よく知っているのは、あなた自身です。
「基本の定義(Why/Who/What/Tone)」をあなたの中で整理し、言葉にして伝えること。
あるいは、デザイナーとの対話を通じて、その定義を一緒に掘り起こしていく。
あがってきたデザインをチェックする時は、「自分の好き嫌い」という眼鏡を一度外してみてください。
そして、「このデザインは、あのお客様(Who)に、私たちの価値(What)を届けてくれるだろうか?」という視点で見つめてみる。
そうすることで、デザイナーはあなたの「魔法使い」ではなく、同じゴールを目指す「最強のパートナー」に変わるはずです。

既製品のパッケージでも、選ぶ基準は変わりません
「うちはオリジナルのデザインを作る余裕なんてないし、既存のパッケージを使っているから関係ないかな」
そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、実は既製品を選ぶ時こそ、この「基本の定義」が最大の武器になります。
例えば、お菓子を包む箱をカタログから選ぶ時。
「なんとなく可愛いから」と選ぶのではなく、「私たちのターゲットは落ち着いた50代の方だから、この質感の箱の方が信頼されるはずだ」と、定義に照らし合わせて選ぶ。
もし100点満点の既製品がなかったとしても、「この色なら、私たちが伝えたい温かさは表現できそうだ」という根拠を持って選ぶことが大切です。
「選ぶ」という行為もまた、立派なデザインのプロセス。
その積み重ねが、他のお店と似たり寄ったりではない、あなたらしい「一貫性」となってお客様に伝わります。
作って終わりにしない。次の改善に繋げる「検証」のしかた
デザインが完成し、市場(マーケット)に出た瞬間。
それは「終わり」ではなく、本当の意味での「お客様とのコミュニケーションの始まり」です。
一度出したデザインを、どう育てていくか。
その姿勢が、小さなお店が長く愛されるための秘訣です。
仮説がズレていただけなら、何度でもやり直せる
もし、新しくしたデザインの反応が思うように得られなかったとしても、どうか落ち込まないでください。
それは「センスがなかった」からでも、「才能がない」からでもありません。
ただ、最初に立てた「基本の定義(仮説)」のどこかが、今のお客様の心と少しだけズレていただけです。
「ターゲットの設定が広すぎたかな?」
「伝える強みが、お客様が求めているものと違ったかな?」
根拠を持って作ったデザインなら、このように「どこを直せばいいか」の目星がつきます。
失敗はセンスのせいではなく、次の成功のための貴重なデータ。
そう捉えることで、何度でもしなやかに、前向きな一歩を踏み出せるようになります。
最大のヒントは「お客様の生の声」に隠れている
デザインの答え合わせをする、一番確実でシンプルな方法があります。
それは、勇気を出してお客様に直接聞いてみることです。
「このチラシのどこに惹かれて来てくださったんですか?」
「このパッケージ、手に取った時にどんな印象を持ちましたか?」
社内のスタッフや自分の好みだけで完結させず、お客様という「外の世界」にある客観的な事実に耳を傾けてみてください。
「意外とここの言葉が刺さっていたんだ!」という驚きの発見があるかもしれません。
お客様の声を受け取り、少しずつ定義を磨き上げ、デザインを微調整していく。
このサイクルこそが、小さなお店がデザインを味方につけて、ファンを増やしていくための着実な一歩になるのです。

まとめ:デザインは、あなたの大切な商品を届けるためのお客様への手紙
デザインは、ただのおしゃれや飾りではありません。
あなたの誠実な想いや、一生懸命育てた商品の価値を、必要としている人へ届けるための「手紙」です。
センスの有無に振り回される必要はありません。
まずは「誰に、何を伝えたいのか」という、あなたの心の内側にある言葉を整理することから始めてみてください。
その小さな一歩が、今の「停滞」を打ち破り、新しい景色へとあなたを連れて行ってくれます。
もし、一人で抱え込むのに疲れてしまった時は、他者の視点を借りるのもおすすめです。
自分では見えなかった角度からの、新しい気づきがみつかるはずです。
進む一歩を、見たくなる。
変わりたいけど変われない。何から始めたらいいのか分からない。
そんな「今」の悩みや課題を解決するための小さな一歩を一緒に見つけましょう。